講 座 |
近赤外分光 V.近赤外励起ラマン分光 閔 栄根・伊藤利昭・M口宏夫
ラマン分光が,いま飛躍的に発展しようとしている. 1064 nmの近赤外レーザー光を励起光として,新しい近赤外マルチチャンネル検出器を用いた次世代型のラマン分光装置の登場により,蛍光の妨害を最小限に抑制し,かつ可視光励起の場合と遜色のない高い感度を持ったラマン分光が現実のものとなりつつある.ラマン分光に携わる研究者,技術者の長年の夢であった「何でも測れるラマン分光」が実現しようとしている.ラマン分光の応用は,これまでの物理,化学,生物学の基礎研究から工学,医学,農学などの応用研究,さらに工業,環境分析から製品管理,資源リサイクリングなどの応用技術に至るまで幅広く大規模に展開して行くであろう.本稿では,筆者らが試作した1064 nm励起マルチチャンネルラマン分光装置およびその応用例を紹介しながら,近赤外励起ラマン分光の基礎,実際および応用について解説し,21世紀におけるラマン分光の将来を展望する. |
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