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近赤外分光 V.近赤外スペクトルの定量法 宮本久美 近赤外分光法が幅広い分野で実用されている最も大きい理由は,前処理なしに非破壊で丸ごと分析ができる点にある.しかし,近赤外スペクトルには多数の含有成分の吸収が重なっており,そこから目的とする情報を引き出すことは容易ではない.K. Norrisは,スペクトル解析に初めて重回帰分析を用いてこの問題を解決し,近赤外分光法の今日の発展を築いた.近年,分析機器の発達で一度に大量の測定データが得られるようになり,その中から有益な情報を最大限引き出す統計的,数学的手法であるケモメトリックスが注目されている.日本でのこの分野の研究は遅れているが,近赤外分光法では必須のデータ解析手法である.本稿では,近赤外吸収分光における定量分析のためのスペクトルデータの前処理法,多変量解析による検量モデルの作成と検証法などについて解説する. |
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