平成23年度日本分光学会年次講演会が,平成23年11月30日(水)〜12月2日(金)の3日間にわたり,(独)理化学研究所横浜研究所において開催されました.理研横浜研究所は,西村善文会長が所属する横浜市立大学と隣接しており,NMR分光法を用いた生体物質の研究が盛んな場所で,そのような雰囲気の中,西村善文会長の開会の挨拶により,年次講演会が始まりました.参加者は196名で,口頭発表(招待講演を含む)28件,ポスター発表41件と盛会でした.
近年,各種分光法を用いた,蛋白質や核酸などの生体関連物質の構造やダイナミクスの研究,医療への応用が発展しており,今回の国際シンポジウム「生命・医療への分光学の応用」が企画されました.シンポジウムは,4つのセッションから構成され,最先端の研究成果が発表されました.
初日の午前中は,「生体,組織の分光研究」のテーマのもと,M.D. Morris (University of Michigan, USA), H. Sato (Kwansei Gakuin University, Japan), K. Awazu (Osaka University, Japan),3名の招待講演が行われました.ラマン分光による細胞,組織,骨などの研究,癌などの診断,レーザーなどによる治療など,医療への応用が紹介されました.
午後は,「蛋白質ダイナミクスの分光計測」のテーマで,H. Ihee (KAIST, Korea), S. Adachi (KEK, Japan), S. Takahashi (Tohoku University, Japan)3名の招待講演が行われました.午後のセッションでは,時間分解X線回折によるタンパク質構造ダイナミクスに関する研究が紹介され,構造生化学の分野における研究の発展が紹介されました.
コーヒーブレイクのあと,「生命科学におけるBioNMR」のテーマで,Y. Yoshinari (Kyoto University, Japan), D. Craik (University of Queensland, Australia), F. Inagaki (Hokkaido University, Japan) 3名の招待講演が行われました.NMRイメージングによる診断が医療現場で使用されていますが,NMRイメージングや蛋白質の構造や薬物・蛋白質相互作用の研究が紹介されました.
夕方,6時からウェルカムパーティーが,理研横浜研究所2階のレストランで開催され,海外からの招待講演者と懇親を深めました.
12月1日の午前中は,国際シンポジウムの一般講演3件が行われ,生体関連物質の分光研究について発表がありました.ショートブレイクの後,「生体関連分子の分光研究」のテーマで,J. Oomens (FOM Institute for Plasma Physics, Netherlands), S. Ishiuchi (Tokyo Institute of Technology, Japan), H. Saigusa (Yokohama City University, Japan)3名の招待講演が行われました.生体関連物質の高分解能分光など基礎化学分野での研究が紹介されました.このセッションで,国際シンポジウムの口頭発表は終了しました.
午後1時30分から3時まで,奇数番号のポスターセッションが開催されました.ポスターは口頭発表が行われた大ホール前のホワイエで行われ,活発な議論が交わされました.その後,3件の年次講演会の一般講演がありました.コーヒーブレイクのあと,日本分光学会賞および奨励賞の授与式と受賞記念講演がありました.日本分光学会賞は寺前紀夫氏(東北大学)が,奨励賞は藤田克昌氏(大阪大学)が受賞しました.午後6時から,懇親会が開催されました.
12月2日は,午前中,一般講演が6件ありました.午後1時30分から3時まで,偶数番号のポスター発表があり,活発な意見交換が行われました.その後,4件の一般講演がありました.一般講演では,機能性材料,生体関連物質,金属ナノ粒子などの分光研究,微量分析,イメージング,医療への応用など様々な研究に関する発表が行われ,活発な議論が展開されました.
お昼の時間には,ランチョンセミナーが行われました.11月30日は分光計器株式会社とケイエルブイ株式会社,12月1日は株式会社日本サーマル・コンサルティングと株式会社堀場製作所,12月2日はレニショー株式会社と有限会社エーピーエフから,最新の機器や測定結果が紹介されました.
口頭発表が行われた大ホールの前のホワイエで,企業展示が行われました.株式会社インデコ,ウシオ電機株式会社,株式会社エス・ティ・ジャパン,有限会社エーピーエフ,株式会社オプトライン,ケイエルブイ株式会社,株式会社サイエンスラボラトリーズ,スペクトラ・フィジクス株式会社,ソーラボジャパン株式会社,大陽日酸株式会社,株式会社デジタルデータマネジメント,株式会社東京インスツルメンツ,日本分光株式会社,ブルカー・バイオスピン株式会社,株式会社堀場製作所に参加していただきました.
年次講演会の最後に,若手講演賞が,久保稔氏(兵庫県立大学),吉田大樹氏(早稲田大学)に,若手ポスター賞が高妻智一氏(東京工業大学),若林傑(神戸大学),米丸康央(大阪大学),今枝佳祐氏(早稲田大学),齋藤友里恵氏(埼玉大学)に授与されました.若手研究者の今後の活躍に期待したいと思います.
なお,国際シンポジウムは,財団法人JKAの補助を受けて開催されました.JKAに深く感謝いたします.国際シンポジウムは,今回で5年目の区切りの年を迎えました.外国からの招待講演者が学会に参加することにより,年次講演会の参加者が増え,また,口頭発表の数も増加し,学会の活性化に大いに貢献しました.さらに,シンポジウムを計画する側をも活性化する効果があったと思います.
(早稲田大学 古川行夫)
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写真1 講演会場の様子 |
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写真2 学会賞表彰式(左,緑川会長;右,寺前氏) |
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写真3 ポスター発表会場の様子 |
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写真4 企業展示会場の様子 |
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